雨のにおいのする街……その3 話は跳んでハインラインへ
物語は急展開。
例のリンクスを魔女と呼ぶ老婆が急死…だったと思う😰
動揺するリンクスからのテレパシー(だよな)がマイケルを呼ぶ。
コンピューターに触らないように。今触ると危険。
そう言って仕事中断、飛び出すマイケル。
なんだぁ?ブツブツ一人で話してたかと思ったら〜!……と、反発した所員が「我々で直しちゃおうぜ!」と手を出すのだ。
コイツらも問題だけど、マイケルも問題だ。
そんなあまりにも中途半端なままで放ってくなよ。
しかも、天才と謳われてても、完全にナメられ。カリスマ性無いなあ〜。まあ、子供だし、仕方ないか。
村ではあのバケだぬき…こと、所長の娘か騒ぎを大きくする。彼女はマイケルとリンクスの会話を盗み聞きしていて、リンクスを魔女だと煽り立てるのだ。
そして、
「証拠はこれよ!」と、マイケルにナイフを投げつける!
「だめ!!」
リンクスが叫び、ナイフはマイケルの喉元寸前でピタリ!
見たでしょ!彼女は手を使わないで物を動かす事ができるのよ!念のためこのナイフは偽物よ!
いや、もう、なんでそんなもの持ってるの?しかも素晴らしいナイフ投げのウデ前です、バケだぬき様。
これで一気にヒートアップの村人は、銃を持ち出し
魔女狩りモード。
そして、放たれた銃弾はマイケルの肩を貫くのだ〜〜。
さあ、一気にここまで来たけど、この最高に緊迫するシーンに、当時猛烈にひっかかったコマがある。
撃たれたマイケルが倒れるカットだ!
「きゃあ!マイケル!」
きゃあ!はいいけど、口押さえて棒立ち。
倒れかかるマイケル。
アニメならスローモーのストロボだ、絶対。
う……受け止めんかいっ!
身構えることをしないで地面にぶっ倒れるって、それだけでも怪我モノだ。
ただでさえ撃たれて痛いのに〜〜。
漫画をお持ちなら見て欲しい。なかなか可哀想にみえるのだ、マイケルが。
そんな修羅場にメドゥサの所員が乱入。
触ってしまったがためにシステムが暴走。あと😰時間で爆発すると言うのだ。
「二次冷却水が沸騰している」…らしい。
半径40キロ😰だかは吹っ飛ぶって。?
やっぱ、原発かな。
これを止められるのはマイケルだけ。
怪我を負って動けない彼に代わってリンクスが現場に入り、マイケルからテレパシーで指示を受ける作戦開始!
でも、救急車呼べよ。出血、大丈夫か、マイケル。
さあ!
現場の所内はあちこち火花と煙が吹いて、バチバチ大変な状態。敵に攻撃された秘密基地か、撃沈間近の艦艇のイメージ。
マイケルの指示に従って、なんか押したり回したり。
レバーをつかんだ手のひらに火傷!
「真っ赤に焼けてて触れない!」
スカートの裾を引きちぎり手に巻きつけてレバーを握る。
そのね、レバーね。
フォークリフトかクレーンか…いや、もっと身近ならバスのシフトレバー。
握りのところが丸い玉になってる、アレだ!
巻きつけた布がブスブス煙を上げる。
下ろしたっ!次は?!
「それで…終わりだ…」
あんまし、難しそうな作業には見えなかった……。
IQ200の天才もサバスの魔女も、恋すりゃ普通の男と女。まあ、結構なことだがねえ。
……みたいなフレーズでハッビーエンド。
コンピューターの修理はどうしたろう。直すどころか致命的に壊してしまった気がするけど…。
メドゥサ2号は「考えるコンピューター」と言われてるらしい。冒頭の会話で出てくるんだけど、実際にその能力を見せる展開は無い。ちょっと残念。
例えばリンクスがテレパシーでコンピューターと会話するとか、最終的に暴走を止めるとか。
意思を持って考えるコンピューター。
当時はまだ具体的なイメージが持てない時代だったかな。
………と思ったら、とんでもない事に気付いたっ!
ハインラインのSF小説「月は無慈悲な夜の女王」だ!
月世界のコンピューター技師マヌエルは月政府のメインコンピューターが自我を持っているのを知っているただ一人の人間。彼はコンピューターをマイクと呼び、やがて月世界が地球から独立するための戦いを起こす。
そんな話だ。
いや、ストーリーは別にどうでもいい。問題はこの「マイク」。意思があり、感情を持ち、孤独に苦しみ、やがでバーチャルで自身の姿も作り出す。そして「私は生きているのですか?」と尋ねるのだ。
え?別に驚くような設定でもない?
まあね。今はそうね。
問題はこの小説が1965年前後の作品、つまり「雨の…」の中で「メドゥサ2号」が描かれるより前のものだってこと。
「考えるコンピューター」がどんなものかイメージできないなんて、もう言えないよ〜〜〜。
ってか、さすがSF界の巨匠。
その想像力は恐ろしい。
因みに余談の域に入るけど、この小説の中でもうひとつ、いつか実用化されるのではないかと思っているものがある。
射出機だ。
月の資源を地球に輸送する設備で、月面に設置された長〜いパイプ?レール?…のようなものだ。これで荷を水平に打ち出す。
月は丸い。
土地も広い。
上に向かって打ち出す必要はない。
パイプの中で脱出速度まで加速された荷は、月の重力を振り切って地球へ。それを衛星軌道で確保して、順次地球に下ろすのだ。
すごい画期的な輸送方法だと思うけど、どう?
小説の中ではこの射出機で打ち出したブツを、地球の未開発地に落として威嚇する場面がある。
すべてのブツを「マイク」がコントロールし、地球と交渉する展開はリアルでとても面白い!
そんな使い方されたら、それはそれで困るけど。
「月は無慈悲な夜の女王」はハヤカワ文庫で出ている。派手なアクションはないので全体的に地味、はっきり言って。でも月世界の社会構造が緻密に設定されていて、じっくり読むにはめちゃくちゃ面白い。
数年前にハリウッドで映画化が発表されたけど、さあ、そのあとどうなったか?