勝手気ままに漫画を語ろう!忘れちゃってた古〜いのやら、昨日たまたま観たのやら。

ふと思い出して語りたくなったあの漫画。細かい事忘れてても気にしないで書いちゃってます。のんびり書けるときだけなので、更新は疎らです。気長にお付き合い下さいね。

「アルカディアの少年」……探してもあらすじが語られてる記事がヒットしない。もしかして、無い?ならば私が上げて、ネットにこの作品を刻み込んでおくよ。

あべりつこ著。
確か少女フレンドに読切りとして前編後編に分けて載って、その後、リバイバルで少しだけ加筆され、
一挙掲載されていたと思う。
単行本にはなってない…のかな?

読んだのは小学生の頃。

絵柄や画面には少女漫画らしい花が飛んだりキラキラ星が散るような華美さや派手さは無いんだけど、
子供にも疑いもなく納得できる「絵の上手さ」みたいなものがあった。(ナマイキな子供だなあ。)

そうは言うけど、
作中で「美しい」とされてる人物や、
「感動的」なシーンが、
読み手に必ずしもそう伝わってない漫画って、
ほら、
やっぱあるじゃない?

アルカディアの少年」って、
そういうところが全くなくて、描かれているものにストレートに、素直にに入り込めるって感じでね。

だから半世紀近く経ってもまだ思い出せるほど、
小学生の私には衝撃的な作品だった。

さて。

そんなのは置いといて、今回はストーリーだ。

私の手元にもとっくに漫画はないし、どうやらかなり入手困難絶版的な作品ぽいよね。

素敵な漫画だった記憶はあるけど、詳細は思い出せない……。
そんな方が多そうなのだ。
そのモヤモヤに少しでも…と、アタマの隅っこまでほじくり返してみた!

ケッコー覚えてんじゃん、私っ!

この名作を記録に残すためにも(いやいやオーバー)
ここはひとつ、私が書いとくわ〜!

ちょっと、気合入れて、あらすじ、行きます。



アルカディアの丘に華やかな笑い声が響いてくる。
周りの空気を支配するかのような自信に輝く少女。

「おお、ネーリアよ」

さっそく風のニュムペ(妖精)達が噂話を始める。

「私達妖精よりも美しいとは、なんて娘!」
「それに比べてニーケは」

ネーリアの後ろには母親に手を引かれた少女。

「ネーリアの姉妹には、ちょっと見えない」

地味でおとなしいニーケは、心無いニュムペの噂話にいつも傷付いていた。

「ネーリアはかわいいけど、私はかわいくないって。しょっちゅうニュムペ達が噂してるもん」

そんなニーケを慰めようと、父は小さな弓を作ってくれる。

「森へ行ってそれでお遊び」

森でひとり遊びをしているうちに、弓の弦を切ってしまうニーケ。
どうしよう…としょげていると少年が声をかける。彼は手際よく弓を直すと「またね」と駆けて行った。その先には彼の名を呼ぶ老人と羊の群れ。
どうやら彼は祖父と羊飼いをしているようだった。

その夜、ニーケの家では母が羊飼いを見た…と話をしていた。
「ちょっとかわいい男の子だったけど、あの程度じゃあね」
髪を整えながらネーリアが言う。
自分が関心を寄せてやるほどの子でもないわ〜だろうか。美しくて取り巻きも多いネーリアは、高慢で
自尊心も高いようだ。
ネーリアはそう言うが、ニーケはあの少年の「またね」を思い返して、ひとり顔をほころばせる。

森で再び会った二人は、すぐに仲良くなった。

「きみ、名前は?」
「ニーケ…」
「ふうん、ぼくはね」
「エンデュミオーン。羊飼い」
「あれっ?」

ニーケは初めて会った時に、老人が彼をそう呼んだのを聞いていた。そして憶えていたのだ。

恥ずかしそうに俯くニーケと嬉しそうなエンデュミオーン。
それ以降、ふたりはいつも森で一緒に遊ぶようになった。

エンデュはニーケに弓の使い方を教えてくれる。
エンデュが引くとニーケの小さな弓は驚くほどの威力を見せるのだった。

ある夜ふとニーケがエンデュの元を訪れると、彼は酷く打ちひしがれ、悲しみに沈んでいた。
祖父が、亡くなったのだ。
ひとりぼっちになったと悲しむエンデュにニーケは

おじいさんの代わりに、私がそばにいる。

と励ます。
いや、
それは励ましではなく、誓い。

「あなたのために、綺麗になるね」
そしてふたりはお互いをかけがえのないものとして、手を取り合う。



数年が経ち…。

アルカディアの丘。
自分の名を呼ぶ声に振り向くエンデュミオーン。
丘を駆けて来るのはニーケ。

ふたりは恋人同士になっていたが、美しい青年に成長したエンデュに比べて自分が見劣りすることに
ニーケの心は陰りがちだった。

エンデュと姉のネーリアが連れ立って歩くのを見、
その想いが噴き出す。

「美しかったわ。似合ってた。
綺麗になれなかったこんな私よりネーリアの方が!」
「何が言いたいっ!?」

声を荒らげるエンデュだが、ニーケの思いは承知。
抱き合う二人を悔しげに見るネーリア。
子供の頃は「あの程度じゃね」と相手にしなかったのに、美しい青年になった今は自分になびかせたいらしかった。

そんなアルカディアの野の夜に、ある異変が起こっていた。
空を渡る月の軌道が、このところとても低いのだ。

「(アルテミス様が)お気に入りの男でも見つけて
夜な夜な眺めていらっしゃるんじゃあ?」

村の大人はのんきに笑い合う。

まさか…!と胸が騒ぐ。そして今夜は満月だ。

「おお…今夜は、特に低い…」

そしてエンデュの元に駆けつけたニーケは
彼を連れ去ろうと地に降りてきた女神アルテミスを
見るのだった。


前編、終了。